著者が庭園のデザインをする際、迷いが生じることがしばしばある。たとえば、大きな石を庭園のどこに配置すべきかを考えても、よいアイデアが出てこないことがある。そんなときは、石のことを考えるのを一旦やめにする。別の作業に専念して、その日は家に帰ってしまうのだ。そうすると、ふとした瞬間にひらめきがやってくる。
アイデアをひねり出そうとデスクで唸ってもうまくいかないなら、一旦考えるのをやめてみよう。時間に余裕がないなら、1時間だけでも考えるのをやめて、他の仕事に専念する。人間は長い時間、一つのことに集中できるようにはできていない。だから、デスクで考え続けてもうまくいかないのだ。
坐禅は禅僧にとって大切な修行だが、1日中座禅に集中することはできない。坐禅には「一炷」という単位があるが、それは1本の線香が燃え尽きるまでの40分くらいの時間を指す。「一炷」の後には「経行」という小休止が挟まれ、この間は座禅を解き、ゆっくり呼吸を整えながら静かに歩く。「経行」によって身体の凝りがほぐれて、新たな気持ちで座禅に臨むことができるのだ。
仕事であっても、本当に集中できるのはせいぜい1時間だ。集中力が途切れたときは、小休止を取って身体を動かそう。「ひらめき」は心身が整ったときに、無意識の中から出てくるものだ。
最近の若い人はメンタル面が弱いといわれる。少し叱られただけでしょげてしまい、それがきっかけで会社を辞めてしまうこともある。これは豊かな社会になり、昔ほど根性がいらなくなったからかもしれないが、原因はそれだけではなさそうだ。
いまの若い人はとても生真面目だ。指示されたことは必ずやり遂げようとするし、できなければ自分を責めたりもする。自分を責めることは、他人から責められるよりも苦しいものだ。これでは精神的に追い詰められていってしまう。
物事が続かないのなら、もっと「いい加減さ」を身につけたほうがいい。これは、さぼったり手を抜いたりしろということではない。どこかでフッと力を抜き、「ほど良い加減」を知っておこうということだ。
たとえば、与えられた仕事が計算通りに進むことは滅多にない。そもそも、部下の成長を望む上司は、実力以上の仕事を与えているものだ。そんなときは、必死に努力しても100%には至らない。だからこそ、次は100%を目指そうと一層努力する。仕事はこの繰り返しだ。
達成できなかったことを真摯に受け止めた上で、「いい加減さ」を発揮する術を身につけよう。
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